色覚検査

学校検診シーズン到来で当院も3箇所の小学校を担当させていただきます。昨年までも大学からの出張先(隠岐等)で検診を担当していましたが、この次期になるといつも色覚検査のことが気がかりでした。色覚検査は以前は小学生全員もれなく受けていましたが、現在は希望者のみということなっています。これは色覚異常を有する人が不当な差別を受けないようにという配慮からの事であり勿論差別に繋がるようなことはもってのほかですが、検査そのものはやはりなるべく受けて頂きたいなあと常々思っています。
 絵を書くときなど「○○君の色って変!」などと言われて悲しい思いをする子が出ないか、またそのとき先生が(本人、親すら異常を把握していない子に対して)周囲の子との関係ともども上手にフォローアップできるのかどうか。通常の授業でも緑黒板に赤チョークなどは識別しがたいとされるため配慮が必要となりますし、教科書でも弁別困難な色使いがされている場合も有るとの話も聞きます。もちろん教育現場の事については部外者があれこれ心配すべき事ではないのだろうとは思いますが。
 やはり一番心配なのは進路&職業選択の制限です。以前より門戸が広がったとはいえ、依然として進学や就職上の制限は存在します。程度の軽い異常であれば日常生活で本人が気づかない事も有ります。ずっと憧れていざ夢に踏み出そうとしたら門前払い、なんて事があれば非常に悲しい事です。色覚異常のある子供さんが例えばパイロットや運転士などに憧れているとして、やんわりと諭したり軌道修正してあげることの出来るのはやはりご家庭、親御さんだと思うのですが、まず異常があるということを知っていなければどうにもなりません。
 男性の約5%(女性は約0.2%)に異常があるとされ、比較的頻度は高いものです。大半は軽度異常で日常生活を脅かすほどでは有りませんが、それでも信号機や見えにくい色の組み合せなど生活上気をつけるべき事も多々有ります
(参照:日本眼科学会)。勿論検査に際しては個別検査とし十分なプライバシーへの配慮が重要なのは言う迄もありませんが、本人さん、親御さんに事実に気づいて頂く事というのは非常に大切じゃないか、というのが一眼科医としての正直な気持ちです。